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強迫性障害専門外来

強迫性障害は、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまう性質の病気です。

たとえば、不潔に思えて過剰に手を洗う、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないといったことがあります。

主な強迫観念と強迫行為

意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。

不潔恐怖と洗浄

汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯をくりかえすドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを恐れて、さわれない。

加害恐怖

誰かに危害を加えたかもしれないという不安がこころを離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する。

確認行為

戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを過剰に確認する(何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手でさわって確認するなど)。

儀式行為

自分の決めた手順でものごとを行なわないと、恐ろしいことが起きるという不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。

数字へのこだわり

不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。

物の配置、対称性などへのこだわり

物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。

治療

当院では、薬物療法のみでは治療効果が十分でない方に対して、行動療法を行っております。病状により薬物療法との併用も可能ですが、薬物療法のみの治療は行っていません。対象年齢は中学生以上となります。

行動療法・曝露反応妨害法とは

強迫性障害は、主に曝露反応妨害法という行動療法の一技法を使って治療します。

曝露反応妨害法は、自分の恐れている、あるいは苦痛を引き起こす状態に自らの身を置いて不安にした上で、その不安を和らげるために行っていた動作(強迫行為/反応)を行わないでいることにより不安な状況に徐々に慣れていくという治療法です。

この治療は不安を消すのが目標ではなく、不安に慣れるのが目標です。不安を消そうとしないことが大切です。

曝露反応妨害法は、強迫観念、強迫行為が起こる状況で行う必要があるので、基本的には診察室内でなく生活の場が治療場所となります。自宅、学校、職場、電車内などで課題を行い、報告してもらう形になります。その上で適切なアドバイスをして更にまた課題を行ってもらうという形で治療は進んでいきます。

予約について

行動療法を行うには強い治療意欲が必要です。また、治すためには苦しいこと(暴露反応妨害法)をあえてやるという覚悟も必要です。

本人の治療意欲が必要なので、予約は必ず本人から行ってもらうようにしています。申し訳ありませんが、家族や知人、友人からの予約はお受けしていません。

強迫性障害専門外来の診療時間

 
午前 (10時~13時30分)
午後 (14時30分~18時30分)

火曜日 午後(14時30分~18時30分)にも強迫性障害専門外来の診療を行っております。

※土曜日の診療時間は、第2、第4土曜日の12時~14時30分です。

 土曜日は再診のみとなります。

野間医師 インタビュー記事

こちらのコラムは、「小さなことが気になるあなたへ」(主催:OCD研究会)のホームページで公開されたインタビューを、許可を頂き加筆修正の上、転載したものです。

強迫性障害や当院で行っている行動療法についてのご参考にお読み下さい。

Vol.1 OCD専門外来での治療

セレーナメンタルクリニック 院長

野間利昌

目次(クリックまたはタップで該当箇所へ飛びます)

  1. 強迫性障害専門外来を担当した経緯
  2. 患者さん自身が治療動機をもつ
  3. 薬物療法と行動療法
1.強迫性障害専門外来を担当した経緯

●野間先生がOCDの患者さんの診療にかかわるようになったのは、どのような経緯だったのでしょうか。

野間:2001年、千葉大学医学部附属病院で研修医をしていた頃、初めて受け持った患者さんの中にOCDの方がいました。

その患者さんの治療に行動療法を行いました。

当時、千葉大には、アメリカで行動療法を学んできた心理士の先生がいらっしゃって、その先生に教えてもらいながら行動療法を行いました。

その患者さんの症状が改善し、退院していったことで、自分でも非常にやりがいを感じました。

その後、OCDの患者さんを診る機会が増えていきました。

その患者さんは、どのようなOCDだったのでしょうか?

野間:強迫性緩慢(かんまん)*1のために、入院していた中学生の患者さんでした。緩慢の症状のために、歯を磨く、ご飯を食べるなどの行為にも非常に時間がかかっていました。

●強迫性緩慢の治療というのは、難しいのでしょうか?

野間:難しかったのですが、曝露反応妨害法にトークンエコノミー法を組み合わせるなどして、治療を進めました。

トークンエコノミー法とは簡単に言うと、ご褒美を設定して、治療意欲を高める方法の一つです。

試行錯誤をしつつ治療を進める過程にやりがいを感じて、OCDの治療に興味を持つようになりました。

その後千葉大学医学部附属病院で、強迫性障害の専門外来を担当することになりました。

大学病院を辞めた後は、現在のクリニックで強迫性障害専門外来をしています。

●長い間強迫性障害専門外来を続けていらっしゃる要因は何なのでしょうか。

野間:OCDでは、行動療法などを患者さんが頑張ってやってくれれば、症状が改善することが多いところが非常にいいですね。

他の精神疾患では、症状の改善は薬物療法や別の要因が主となる場合がありますが、OCDの治療では、患者さんが行動療法の課題をきちんと行うことで改善が期待できますので分かりやすいと思います。

 

2.患者さん自身が治療動機をもつ

●OCDの治療を行っていくなかで、難しいと思われることはありますか。

野間:OCDに限ったことではないですが、「治療への動機」がない人を診るのは大変だと思います。

当院での強迫性障害専門外来の予約では、患者さん自身が直接、申し込まないと受け付けないことにしています。

家族から電話がかかってきても、本人に治療を受けたいという気持ちがなければ、80%以上の場合で治療が進みません。

そのため、家族から予約の電話があっても、本人に代わってもらって、本人が行動療法など治療を望む意思を確認できたら、予約を受け付けます。

もちろん、当院でも、強迫性障害専門外来以外の予約は、そういうシステムではありません。

●インターネットで検索して、問い合わせてくる方が多いのでしょうか?

野間:9割方は、ネットで検索して来院されてます。あとは、他院からの紹介の方です。

●こちらで診ていらっしゃるOCDの患者さんの中には、子どもさんも含まれているのですか。

野間:当クリニックの外来では中学生以上を対象としています。

●仕事や学校に通いながら治療をしている人はいますか?

野間:そういう方もたくさん来院しています。

初回の診療は平日の日中に限っているため、来づらいと思うのですが、治療をしたいという気持ちから何とか融通して来てくださいます。自費になりますが、ビデオ通話を使ったオンラインカウンセリングも行っていて、そちらのほうは土曜日も行っています。

●こちらにいらっしゃる患者さんは、女性の方が多いのでしょうか?

野間:どちらかと言うと女性が多いです。

男性の方は仕事で忙しいため通院が難しいということもあるのかもしれせん。

OCDは、自由な時間が多いと強迫症状にとらわれて悪化しやすいため、仕事をしていることで、悪化を防いでいるということもあると思います。

そのため、仕事に就いていないなどで自由な時間が多い人には、何でもいいから別のことをやりなさいとお話しています。

症状のとらわれから脱するために病気以外のことに興味を持ってもらうことが大切です。

 
3.薬物療法と行動療法

●薬物療法に抵抗感を持つ患者さんはいますか?

野間:私の外来の患者さんで、薬物療法をしている人は、半数ぐらいだと思います。
基本的には薬について本人の考えを聞いて、飲みたくないのであれば、薬物療法なしで行動療法を行います。

しかし、薬を使わずに行動療法を始めても、不安が大きすぎて課題がまったくできない場合は、薬物療法を併用することがあります。

また、抑うつの症状が強い患者さんには、薬で気分を和らげてから、行動療法を始めることもあります。

●行動療法での課題は、ホームワークが中心なのでしょうか?

野間:クリニックで課題を行うことはほとんどなく、ホームワークが中心です。
ホームワークでは、課題設定が一番重要です。

課題のハードルをクリアできそうな高さにして、課題を行う期限を、2週間とか4週間と決めます。

というのは、同じ課題を延々と続けていると、マンネリ化して課題に取り組む意欲が落ちてきてしまうからです。

同じ課題を続けるにしても本人が今週は3日間できそうだと思えば、その日数を目標にして頑張ってもらい、それが達成できたら、「次の週は4日、5日間できるように頑張ってみましょうか」と提案し、漫然と課題に取り組まないようにしてもらっています。

●外来での1人当たりの診療時間は、どれくらいでしょうか。

野間:診療時間は10分、多くても15分ほどです。
短い診察時間でも改善していく患者さんは多くいます。なぜなら行動療法は日常の生活の中で行うホームワークが一番重要だからです。

患者さんには、治療はピアノのレッスンと同じだと言っています。

ピアノのレッスンに行き、先生にアドバイスされたら、家で練習し、また先生の前で弾いて、さらに「ここをこういう風に弾くと良いよ」と言われたら、そこを気をつけて練習するという風に進んでいきます。

一番大事なのは、家での練習で、医師からのアドバイスを受けて、毎日課題に取り組んでいけば、症状がよくなります。
しかし、ピアノの練習と同じで行動療法も医師など専門家の診療を受けないで1人で頑張ろうとしても、多くの人は、難しいから、辛いからやっぱり駄目だと途中で止めてしまうのです。

「ピアノの先生とのレッスンがあるから、練習をきちんとやらなくちゃと思うように、しっかりと次回の診療までホームワークに取り組んでください」と話しています。

●患者さんは月に何回くらい通院しているのですか?

野間:最初の1、2カ月は、できれば毎週来てもらいます。

毎週きちんと課題をこなしていくと、行動療法のコツがつかめてきます。そうなったら、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回と間隔をあけていきます。

最初から2週に1回だと、なかなかコツをつかむことが出来ないので、毎週をお勧めしています。

また受診当初のほうが治療への動機が高いということもあります。「鉄は熱いうちに打て」と同じですね。

●患者さんが治るために、大事なことはどんなことでしょうか。

野間:治療に素直に取り組むことが一番大事だと思います。

OCDの治療では、患者さんが、課題ができないときに「だって、こうだからできません」というように言い訳を話したがることがあります。

「でも」「だって」「どうしても」という言葉を用いて話すと、治療の妨げとなるので、このような言葉は自分にも他人にも使わない方がいいと説明しています。

「でも~だから、出来ません」と言って強迫行為をしていたら症状が改善しません。本当に治したいと思うならば、そういう言葉を使わないで、「辛くても、怖くてもやるしかない」と思って、取り組んでくださいと伝えています。

素直に課題に取り組む人は早く改善していきます。

*注釈
*1強迫性緩慢(かんまん)―――緩慢とは、他人には動作が非常にゆっくり、もしくは止まっている時間が多く見える状態です。

しかし、動作が止まっているときでも、患者さんの頭の中では、強迫観念や強迫行為が行われていて、それらが済むまでは次の動作に進むのが困難なタイプのOCDです。

 

Vol.2 不安に慣れていく

目次(クリックまたはタップで該当箇所へ飛びます)

  1. チェックポイントを減らす
  2. 治療の期間と寛解について
  3. 不安に慣れていくための治療
1.チェックポイントを減らす

●OCDの症状について、時代とともに変わった点はありますか?

野間:OCDの根本的な部分は変わっていないと思います。

しかし、生活の変化が症状の現れ方に影響している部分はあると思います。

スマホやSNSなどからの情報漏えいに関する強迫観念など以前は見られない行動でした。

また、除菌や洗浄商品のCMが多く流れるようになったことが不潔恐怖症状の悪化に影響を及ぼしている気がします。

●強迫行為を減らすために大切なことや考え方はありますか。

キーワードの一つは、「チェックポイントを減らすこと」です。

例えば、確認が過剰な患者さんが、鍵を閉めたけれど、閉まっている気がしないと言うことがありますが、それは、見たという記憶が不確かになるためです。

強迫性障害の人は、記憶力は問題がないのに、覚えられなくなってしまうのです。
その理由を説明するための例として、アメリカ、ロシア、イギリスと国名を覚える場合を考えます。

3つの国名は、覚えられますよね。

では、30個の国名ならばどうでしょうか?

ほとんどの人は一度聞いただけでは覚えられません。

つまり、覚える数が多くなると、覚えられなくなるということです。

この例を、外出前の鍵の確認に当てはめると、鍵を締めて、ガチャッと軽く引っ張る、普通の人はチェックポイントが2つなので覚えられます。不安にもなりません。 

しかし、OCDの人の場合のチェックポイントは、
 1.(カギを)持った、入れた。
 2.鍵を回した
 3.かんぬきが入るのが見えた
 4.カチャッと音が聞こえた
 5.手を放した
 6.鍵穴が横になっている
さらに7.ドアノブを持った、8、9、10……とたくさんあります。

30個のポイントを覚えようとしていると、「3つ目のポイントを見たっけ?」と疑問が思い浮かんで不安になり「もう1回見ておこう」と強迫行為をしてしまいます。そうして不安がどんどん増えていきます。

不安になるのが嫌ならばどうすればよいでしょうか?普通の人と同じように確認するポイントを減らすことです。チェックポイントを減らしたほうが、実はちゃんと覚えていられるので不安はなくなっていきます。もちろん、最初は不安になりますが、不安に慣れていくことで不安は減っていきます。
このような説明により、病気の特性を理解してもらった上で、行動療法の課題に実際に取り組んでもらいます。

●では、具体的に治療はどのように進めていくのでしょうか。

野間:患者さんに、まず自分の症状(強迫行為の詳細)を紙に書き出してもらいます。

そして、病気の特性や治療のメカニズムを説明して、行動療法の課題をどのような目標にするかを決め、できたかどうかを評価・記録していきます。

記録をきちんと書いていくことで、自分でも課題をできたのかがよく分かり、課題をクリアすることで達成感が持てて良いという人が多いです。

また、患者さんはできないことに目を向けがちで、できないことばかりに目が向いてしまう傾向があります。

そうすると課題に取り組む気が損なわれてしまうので、「私はこれをできた」「今日も~をやらずに我慢できた」「1週間これを頑張った」と出来たことを書いて、毎回、見せてもらいます。出来たことに目を向けることで少しずつ自信がついてきます。

 

●不潔恐怖、縁起恐怖、加害恐怖のようなほかのタイプでも、基本的な方法は同じなのでしょうか。

野間:そうですね。

不潔恐怖で手洗いが強迫行為の人では、「ここを洗ったら、次はここを」「水しぶきや泡が飛んでないかな」というように洗い方や警戒するポイントが多すぎますし、加害恐怖で人にぶつかったかどうかが気になる人は、「あそこにぶつかってないよな」「ここも大丈夫」というようにチェックポイントが多すぎるということを説明し、同じように治療に取り組んでもらいます。

 

2.治療の期間と寛解について

●治療期間は、どのくらいなのですか?

野間:治療期間は早い人だと3カ月くらいですが、6カ月から1年ぐらいという人が多いと思います。

もっと長くかかる人もいて、実際は人それぞれです。

治療期間が長くても、通院して治したいという動機が続いているのであればいいと思います。

●症状がどのくらい改善すると寛解といえるのでしょうか。

野間:OCDのような病気は、自分が困っていたり、苦しかったり、あるいは、人に迷惑をかけてしまうから苦しくなるものなので、それらが、それほど問題にならなくなれば、通院の必要はなくなります。

症状をゼロにするのを目標にするのでなく、症状をできるだけ減らして生活に支障がなくなるのを目標にすると良いと思います。

また、OCDが重過ぎて、学校や仕事に行けない人は別ですが、症状があっても、仕事や学校には行くように勧めています。

そのように社会に関わった方が改善しやすくなります。

●家族への巻き込みが多い場合はどうでしょう?

野間:家族との関係は治療にプラスになることもあれば、マイナスになることもあります。

あまりにも家族が心配しすぎて、いろいろと手伝ってあげると本人の症状にとって良くないので、そういう場合は、家族が強迫行為のお手伝いをしないように物理的にも心理的にも一定の距離を置くようにアドバイスすることがあります。家族にして欲しいことは、不安に慣れるためのお手伝いや不安を紛らわすためになにか別のことをするよう本人に促したり一緒にやったりすることです。

 

3.不安に慣れていくための治療

●貴院でのOCDへの治療は保険で受けられるのでしょうか?

野間:保険診療で受けられます。

保険診療の範囲内なので、一人の患者さんを10分ぐらいしか診られません。

診察時間が長ければ良いとは限らないと思っています。先ほどの「でも、だって、どうしても」という話をよくする患者さんは、治療が長くなってしまう傾向があり、短い診療時間で、大事なことだけに絞って進めていく治療のほうが結果が良いと感じています。

●OCDが改善して、診療に来なくなった患者さんが、OCDの再発に気づいたときに、行動療法の技術を身に付けることで、自分で立て直すことはできるのでしょうか?

野間:それを目指して治療をしています。

実際、診療を終えた後、何年か経ってから症状が悪くなり受診する人も時折います。

そのときは、また治療に取り組んでくれれば改善の可能性があります。
1回目の治療をある程度覚えていれば、再発後の治療は、その部分を省略して行うことがあります。

中には1回目の行動療法であまり苦労せずにOCDが改善して、再発する人もいます。

その場合、患者さん自身も、再発した後のOCDへの対処法がわからずに、困ってしまうことがあります。
そのため、私としては、治療で苦労しながらも、頑張って取り組んで、よくなったという経験をした方が、OCDへの対処法が身につき、再発の防止につながると思います。

私は、患者さんに「この治療は不安に慣れるためのものだから、不安になってください。安心感を求めては駄目ですよ」とよく言います。

ある程度の不安を持ちつつ、それに慣れていくようにしてもらっています。不安を打ち消そうとせず、不安があっても他のことをしていると不安が薄らいでいくことを経験(行動療法)により体感してもらいたいと思います。

●たくさんのお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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